心臓の音
8時間も陣痛に苦しんだ末、帝王切開で男の子を出産した。
ちっちゃな指に、これまた小さな爪が、それでもしっかりと付いている。
赤ちゃんはそのかわいい手に 幸せを握りしめているという。
よくぞ、よくぞ元気に産まれてきてくれました!
私は大きな感動を覚えながら、母となった従妹に言った。
「 おめでとう!そして女の大仕事、本当にお疲れ様でした。
まずは休んで、ゆっくり体力を回復させてね 」
男と女の大きな違いは、ほんの一時でも
自分の体の中に心臓の音をふたつ聴く事ができる点だと思う。
そう言う私自身は この体にふたつ、まだ聴いてないけれど。。。
この間、銀座 Bar MUGEN で ピアニスト・袴塚淳さんのお祝いをした。
ぎゅっと握りしめて産まれてきたはずのその指を 自由自在に操り、
鍵盤の上で さも簡単そうに躍らせるそのお姿が 実に渋くて魅力的な先輩。
ハート型に焼いてもらった特注フランスパンを
お店のスタッフに預け、こっそりワケを説明したら
『 分かりました。じゃ店からも ボトル1本プレゼントしますよ 』
と気前が良い。めちゃくちゃ嬉しかった。
* ゆうや君、てんちゃん、サンキュ!!*
そしてセカンドステージ。
「 皆さんと一緒にお祝いしたいお方がいらっしゃいます 」 と私が言い、
ご本人は誰の事か知らないままバースデイソングを弾き始め、皆の笑いを誘った。
ウォッカの効いたチョコレートケーキが運ばれ、サプライズは大成功。
ハート型のフランスパンも大ウケだった。
写真は 東京倶楽部・水道橋店にて。
「 このお方が切なく弾くと
全体のサウンドが スっと変わるんです
ジェントルノーツの心臓部、 ピアノ 袴塚淳! 」
こうメンバー紹介した日がある。
そういう意味を込めてのハート型だった。
* 袴塚さん おめでとうございます。
もう一度ぎゅっと握りしめてから親指1本、
サムズアップの年代ですね!
益々 素敵な " 心臓の音 " を聴かせて下さい *
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以前、銀座ナッシュビルへ向かう駅の構内で声を掛けられた事がある。
『 あの、ちょっとお時間ありませんか?お茶でも・・・』
「 いえ急いでるので。」
すると足早に歩く私の横に並び、覗きこむように言ってくる。
『 俺なんてもう40だし、やっぱりダメかなぁ ・・・』
驚いた。まったくなんてナンパの仕方だろう。それに同じ年じゃん!( ← 当時 )
私は立ち止まって言ってやった。
「 男は50からですよ 」
今度は相手が驚いたらしい。
先のとがったコッペパンみたいな皮靴は ピタッと止まったきりだった。
この50と言った時、自分の手をグーにして見せたのが我ながら面白かった。
普通パーにしそうな場面だけれど 私はグーで表現していた。
でも、グーでいいのかもしれない。
10年で指を1本ずつ倒していく。
そして5本倒れ、ぎゅっと握りこぶしを作って、
自分の爪がくい込むほどの様々な思いを経た頃、
最初に倒れてずっと耐えてきた親指が解放されるとサムズアップの形になる。
だから60代はサムズアップ世代。
そりゃ魅力的なはずだわ。